私は幼い頃から山登りが大好きで、よく一人で山奥へ足を運んでいた。特に惹かれたのは、人里離れた山奥にひっそりと佇む神社だった。古い木々に囲まれた静寂の中で、神聖な空気に触れるたびに、心が洗われるような感覚を味わえた。
ある日のこと、いつものように山奥の神社を訪れた。その日は朝からどんよりと曇っていて、空気も重く感じられた。神社に到着すると、境内には誰もいなかった。静寂の中、ただ風の音が聞こえるだけだった。
参拝を終え、ふと振り返ると、奥の石段の上に人影が見えた。白い着物を着た女性で、長い髪を垂らしていた。女性はゆっくりとこちらを振り向くと、薄く微笑んだ。その笑顔はどこか不自然で、背筋がぞっとするような寒さを感じた。
私は恐怖で言葉を失い、ただ立ち尽くすしかなかった。すると、女性はゆっくりと石段を下りてきた。そして、私の目の前に立つと、こう囁いた。
「ここに来てくれてありがとう。あなたを待っていたのよ。」
その声は、まるで私の心を直接撫でるような、不思議な響きを持っていた。私は恐怖で震えながらも、女性を見つめ続けた。
すると、女性の顔が徐々に変化し始めた。白い着物はボロボロになり、長い髪は血まみれになった。そして、その顔は、見るも恐ろしい形相に変貌していた。
私は恐怖のあまり、叫び声を上げて逃げ出した。後ろを振り返る勇気もなく、ただ必死に走り続けた。
しばらく走ると、ようやく人里が見えてきた。私はそこで倒れこみ、助けを求めた。
後に聞いた話によると、私が訪れた神社は、古くから心霊スポットとして知られている場所だったという。かつて、その神社で恐ろしい事件が起こり、多くの人の命が失われたのだという。
あの女性は、その事件の犠牲者だったのだろうか。それとも、何か別の存在だったのだろうか。真相は分からない。しかし、あの日の出来事は、今でも私の心に深く刻まれている。
山奥の神社は、決して一人で行ってはいけない。そこには、目に見えない恐ろしいものが潜んでいる。


コメント