私が大学2年の夏休み、祖母の家がある田舎町に帰省したときのことです。
蒸し暑い8月の夜、虫の音が響く中、私は町はずれを散歩していました。月明かりが薄く、街灯もまばらな道を歩いていると、古びた鳥居が見えてきました。苔むした石段を上がると、うっそうとした木々に囲まれた神社の境内に差し掛かりました。
風で揺れる木の葉が作る影が、月明かりで幻想的に揺らめいていました。そんな中、私の目に飛び込んできたのは、白い着物を着た少女の姿。彼女は朽ちかけた縁側に腰かけ、じっと月を見上げていました。長い黒髪が夜風にそよぎ、まるで時が止まったかのような静寂が漂っていました。
違和感を覚えた私が声をかけようと一歩踏み出した瞬間、パッと目の前が暗くなりました。雲が月を隠したのかと思い、再び目を凝らすと…少女の姿が消えていたのです。残っていたのは、かすかな線香の香りだけでした。
動悸が収まらないまま家に戻り、祖母に話すと50年前にこの町で起きた悲しい事件を教えてくれました。白い着物を着た少女が、まさにその神社で亡くなったというのです。
それ以来、新月の夜に神社を訪れると、その少女の姿が見えることがあるそうです。でも、話しかけようとすると消えてしまうんだとか。
私が見たのは、もしかしたら…。今でも、あの夜のことを思い出すと背筋が寒くなります。


コメント