『猫町』萩原 朔太郎

怪談奇談本紹介
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青空文庫で無料で読める本の中にもたくさんの怪談、奇談があります。その中からわたしが読んでおもしろかったものを紹介したいと思います。

今回は萩原朔太郎の「猫町」です。

猫町 (萩原 朔太郎)
蠅(はえ)を叩(たた)きつぶしたところで、蠅の「物そのもの」は死にはしない。単に蠅の現象をつぶしたばかりだ。――ショウペンハウエル。[#改ページ]1 旅への誘(いざな)いが、次第に私の空想(ロマン)か…

心霊現象が起こる怪談やホラーという話ではありません。怖い話というわけでもありません。不思議な話というよりは、言ってしまえば薬物中毒者の幻覚のようなものの話なのですが、詩人が書くと幻覚も魅力的です。

それは全く、私の知らない何所どこかの美しい町であった。街路は清潔に掃除そうじされて、鋪石がしっとりと露に濡ぬれていた。どの商店も小綺麗にさっぱりして、磨いた硝子の飾窓には、様々の珍しい商品が並んでいた。珈琲店の軒には花樹が茂り、町に日蔭のある情趣を添えていた。四つ辻の赤いポストも美しく、煙草屋の店にいる娘さえも、杏のように明るくて可憐であった。かつて私は、こんな情趣の深い町を見たことがなかった。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/641_21647.html

以前に住んでたところの近くの駅で、入るときと出るときに違う改札口を使っていたことがあります。電車の到着位置に近い階段から上がると別の改札になるくらいのどうでもいい理由から、慣習的にそうしていました。ところがある時、いつもと違う改札から出たときに、いつも使っている駅にこんな場所があったんだと新鮮さを感じました。だけど、それはいつも入る時に使っている改札でした。単に方向が変わっただけの話でした。タネが分かればそういうものか、といつもの世界に戻されるのですが、あの時の感覚が引き延ばされると、この猫町のような話になるのでしょう。

上記のように、わたしが書くといまいちでも詩人萩原朔太郎が書くととても素敵で幻想的な小説になります。青空文庫で気軽に読めますので、みなさんもぜひ読んでみてください。

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